通勤災害について
【Q】 会社の事務所から帰宅途中に、バスから降車する際、降車ステップを踏み外し転倒しました。道路で顔面を強打し骨折するなど、全治1ヵ月の重傷を負いました。この場合、通勤災害として労災保険の給付を受けられるでしょうか?
【A】労災保険の給付対象となる通勤災害とは、次のようなものです。
通勤災害とは
- 労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害または死亡を通勤災害といいます。通勤と災害との間に相当因果関係がある場合に労災保険の対象になります。
- 就業に関し、住居と就業場所の間を、往復した際に起きたものを指し、業務の性質を有するものは除かれます。(ちなみに、合理的な経路及び方法で業務の性質を有するものは業務災害です。)
上記2つの要件を満たした上で、通勤経路の逸脱または中断がなければ、通勤災害の保険給付を受けられると思われます。通勤災害用の保険給付請求書を作成し、労災指定医療機関、労働基準監督署に提出してください。
「合理的な経路」とは
- 乗車定期券に表示され、あるいは事業所に届出している経路(バス、鉄道等)
- タクシー等の利用で、通常の経路が複数あるいずれかの場合
- 道路工事など当日の交通事情により迂回する経路
- マイカー通勤者が貸切の車庫を経由する経路
- 労働者(共働きを含む)以外、子どもを監護する者がいない場合に、託児所や親戚などに預けるための場所を経由する経路
などが挙げられます。
「合理的な方法」とは
- 公共交通機関を利用する場合
- 自動車や自転車等を本来の方法に従って利用する場合
- 徒歩の場合
など通勤方法は、通常用いられているかどうかにかかわらず、一般的に合理的な方法となります。
(注)次のような場合も通勤災害と認められます。
- 複数の事業所に勤務する労働者の、その事業所間の移動中の災害
- 家族を介護するための移動中の災害
- 単身赴任の労働者が、その住居間を移動中の災害
- 職務上の懇親会後の帰宅途中の災害
「通勤経路の逸脱または中断」とは、勤務中に、仕事や通勤に関係なく経路から逸れることを「逸脱」、勤務経路で、勤務と関係ない行為を行うことを「中断」と言います。逸脱または中断の間、及びその後の移動は「通勤」とみなされず、その間の被災は「通勤災害」とはなりません。
だだし、厚生労働省令で、以下の行為などのための最小限度の場合は、逸脱・中断の間を除き「通勤」とされます。
- 日用品の購入その他これに準ずる行為
- 職業訓練やそれに準ずる教育訓練を受講する行為
- 選挙権を行使する行為
- 病院、診療所で診察または治療を受ける行為
- 要介護状態にある一定の範囲内の家族の介護に関する行為
通勤災害が認められるかどうかは会社や事故担当者などが決めるものではなく、労働基準監督署によって決定されるものです。不明な点があれば、労働基準監督署に問い合わせることが必要です。